ザクマシンガンに耐えられる強度を持ったチタン合金を造る目処は立ちましたが、単に強度が高いだけでは装甲には使用出来ません。アレックス(ガンダムNT-1)の登場シーンで、ケンプファーの攻撃に耐えられたのが"チョバムアーマー(複合装甲)"のお陰です。被弾した際、大きな衝撃が伴いますが、幾ら表面強度が高くて破壊されなくても、その衝撃がもろに内部に伝わってしまうと内部が破壊されてしまいます。それを防ぐ為には、複合装甲にする事で衝撃を吸収し内部破壊も防ぐ必要があります。

RX78NTー1 通称アレックス チョバムアーマー装着状態

因みに、チョバムアーマー(Chobham armour)は1960年代に開発された複合装甲の一種であり、イギリスの戦車研究所があるイングランドサリー州の町チョバム*・コモンの地名に由来します。

複合材料には、合成樹脂、カーボン複合材、ガラス繊維、セラミック等有る様ですが、技術は日進月歩で、ごく初期の複合装甲である「チョバムアーマー」はすでに旧式化しており、2020年現在、英語でも複合装甲のことは「コンポジットアーマー」と呼ぶ方が一般的の様です。

主流なのが「拘束セラミック装甲」と呼ばれるものです。チタンなどで構成された角型ケースの中に、セラミック素材を高い圧力をかけて封入したもので、ブロック構造なのが特徴です。

モビルスーツも、ファースト世代の外骨格(外部装甲で全体を支える)構造から、機動性、可変性を重視したムーバブルフレーム(内骨格:骨組みの上に装甲を貼り付ける)構造に進化した事で、装甲パーツも細分化されており、まさに上述のブロック構造になっています。細分化されている為、パーツ毎の大きさは調節可能で、以前紹介した放電プラズマ焼結法でも造りやすいと思われます。

  【外骨格、ムーバブルフレーム比較】

    

RX78−2ガンダム外骨格構造     RX178ガンダムMk−Ⅱムーバブルフレーム内骨格構造

ただ、封入されているセラミック素材がどの様な材質、構造かは超機密事項で明らかになっておらず、独自に考えてみました。

衝撃吸収にはどの素材が最も効果的か?と思い探してみると"衝撃吸収性形状記憶硬質ゲル"という物が有りました。一般的に衝撃吸収には今流行りの厚底マラソンシューズに使用されている様なゲル状物質が効果的な事は解っていますが、如何せんゼリー状では装甲に使うには形態安定性に難が有りますし、衝撃で変形して元に戻らないと交換頻度も高くなり、運用上よく有りません。その点、この形状記憶性を持った硬質ゲルだと、戦闘から戻った時、ある程度の変形ならお湯を掛けると元通り!?との事。

ランニングシューズの衝撃的吸収材(アシックスHPより)

ただ、幾ら硬質ゲルと言っても所詮ゲルですから、単純にチタン合金板の間に挟むだけでは安定しないので、防弾チョッキにも使用されているケブラーの様なアラミド系の合成繊維で包み、その上からチタン合金板を固定する形式を考えました。

装甲断面図

    ※装甲断面図模式図:この様な構造であれば装甲パーツ毎の設計自由度は大きく向上する。

外装甲と内装甲のクリアランス、接合方法等細かい仕様はこれからですが、この方式なら装甲パーツは外骨格形式の様に巨大になることもなく、比較的低コストで自由度を持って設計できると思います。