果たしてそんな金属材料はあるのでしょうか?調べてみると有りました!自動車タイヤに入っている鋼鉄製ワイヤーの中には4500MPa以上の強度の物がある様です。ただし良く調べると、直径が0.4mm以下ととても細い。どうやら、冷間伸線(加工硬化)と結晶粒微細化による効果の様です。では、ルナチタニウムの様なチタン合金の場合はどうでしょうか?

一般的に金属材料の強化機構には次の手法があります。

①固溶強化

溶質原子を母相に固溶させて固溶体合金とすることによって得られる強化法で、純金属よりも顕著に大きな臨界分解せん断応力を持たせることができます。

②析出強化

高温では単相、低温では2相となる合金系を用いて、「溶体化処理」「焼入れ」「時効」という熱処理を経て母相中に微細な析出物を分散させて得られる強化法です。

③加工強化

圧延などによって加工ひずみを導入します。金属を塑性加工すると転位や原子空孔、積層欠陥などの欠陥が大量に発生し、転位が絡まり、結晶の周期性が乱れることで転位が動きにくくなります。

④結晶粒微細化強化

加工熱処理による再結晶で結晶粒を微細化すると、粒界が増大します。粒界は粒内に比べて転位が動きにくいので強度が上がります。基本的に組成を変えることなく強化できることからリサイクル性に富んだ強化法として注目されています。他の強化法に比べれば、強度増加に伴う延性や靭性低下が小さい強化法としても知られ、材料的にも魅力的な強化法です。

この中で、ガンダム(身長18m、本体重量43.4ton)の様な巨大なロボット(モビルスーツと呼ばないとイメージが湧かないと言われそうですが)を構成する部品もまた巨大だと思うのですが、そのためには材料も大きくなくてはなりません。その点において、専門の方なら判ると思いますが、チタン合金で考えた場合、①〜③の手法はとても不利です。④も無理でしょ?と言う声が聞こえそうですが、④は強度が上がっても延性や靭性が低下し難いと言う利点があり、最も理想的なのです。