航空機エンジン材料開発2

開発で難航したのは、疲労強度(特に低サイクル疲労)が仕様を満足出来ず、何度も造り直しを繰り返した事でした。原因は組織制御(組織微細化、結晶方位のランダム化)にあったのですが、どうやっても上手く制御出来ずにいました。金属材料は一般的に高温加熱して柔らかくしてから叩く(鍛造する)事で目的の形状にして行きますが、高温で加熱するため結晶粒が成長します。それを叩き潰す事で細かくするのですが、それだけでは限界があります。色々なプロセスを検討して試す事を繰り返し、そのプロセスをアルファベットで表していましたが、漸く上手くいった時既に"L"まで行っていました。結局、元々有ったプロセスにこだわり過ぎて、根本的に変える勇気が無かった事が原因でしたが、新しい事をする際には、過去の成功体験は一旦忘れる必要があるという事を実感しました。その間何度もシンシナティに通いましたが、その頃にはシンシナティのダウンタウンにあるヒルトンホテルに行くと「お帰りなさい」と言われる様になっていました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です